2013年12月06日

マグネシウム不足が高血圧やうつ病の原因

塩分は高血圧の元凶と言われている。高血圧による脳出血が死亡原因の第1位だった戦後の日本では、食事で摂取する塩分が死亡原因の大きな要因を占めていた。

東北地方などの寒い地方では特に漬け物など塩分が多い食品のために、高血圧から脳出血を発症する人が多かったのである。これを理由に日本では減塩運動が始まった。

様々な降圧剤が開発され臨床現場に登場した時代背景もあったが、日本の食事が塩辛い食事から薄味の食事に次第に移行したことが日本が世界一の長寿国になった直接の理由であると考えられる。

しかし、この減塩運動には大きな落とし穴もあった。その中で最も大きな盲点であったのが減塩運動が「塩の量」のみに注目して、「塩の質」に関しては無頓着であった点である。

塩の質を考えるときに塩の原材料が最も重要である。塩を大きく分類すると精製塩と自然塩に分類されるが、自然塩はさらに岩塩や海塩に分類される。

精製塩と自然塩の大きな違いは塩化ナトリウム以外のミネラル成分が含まれているかどうかである。自然塩はマグネシウムやカルシウムが豊富に含まれ健康的な塩と考えられるが、精製塩には健康に必要なマグネシウムが欠如している。

従って減塩運動は本来、減精製塩(減塩化ナトリウム)運動であるべきであったと考えられる。つまり、精製塩は限りなく塩化ナトリウムに近く、マグネシウムやカルシウムやカリウムといったミネラル成分がほとんど取り除かれているので、精製塩を過剰に摂取すると健康上の問題が発生するのである。

マグネシウムは我々の体の中の300種類以上の酵素反応に補酵素として働いていて、ほぼすべての生合成反応や代謝反応に必要不可欠のミネラル。欠乏により高血圧や細胞老化の原因になることが知られている。

また、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの合成にはビタミンBのみならずマグネシウムが必須でマグネシウム不足はうつ病を引き起こす可能性がある。

一方、カルシウムも不足しがちなミネラル成分で骨や歯の重要な構成成分。乳製品の摂取が少ない日本人はカルシウムが不足しがちで骨粗鬆症の予防を考えると塩に含まれているカルシウムは重要な摂取源となるだろう。

さらにナトリウムだけが過剰摂取される精製塩には調理上のデメリットもある。ナトリウムには微生物の増殖を抑える働きがあるので発酵による旨味成分がでにくいという難点だ。

ちなみに最近、流行している塩麹は麹菌に塩を加えた発酵調味料だが発酵速度を抑えるために塩を加えている。興味深いことに、平均寿命が男女共に日本一となった長野県は減塩運動に力をいれている県の一つだが、従来の減塩運動には必ずしも成功している訳ではない。

長野県は味噌の消費量が日本一で塩分の中に占める味噌の割合が大きいのだ。実際、味噌の摂取は必ずしも高血圧の発症には連動しないことも知られているので、長野ではまさしく質的な減塩運動には成功したとも考えられる。

この長野モデルを考えると味噌や塩麹や海塩に含有されているミネラル成分のおかげで逆に病気の予防効果も期待される。実際、調味料として精製塩を塩麹にかえると塩の摂取量を減らすことができる。塩麹には旨味成分が含まれていているので調味料として使用する量が自然に抑えられ料理には旨味や風味が付加される。

最近、自然塩をつかったレシピ本『カラダとココロが喜ぶ 塩選び&ごちそう塩レシピ』を日本文芸社から刊行したが、単なる量的減塩ではなく質的減塩、つまり味噌や塩麹や自然塩を上手に使うことにより健康的に塩を摂取する質的な減塩運動を心がけたい。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て2007年より順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など100冊を超える。グロービア(http://www.glovia.net/)でも連載中。

※産経新聞 2023年12月4日(水)


代替医療と予防医学のヒポクラテス
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posted by O次郎 at 16:06| Comment(0) | 食と健康

2013年10月02日

たまごの栄養機能





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日本人は一人あたりの卵消費で世界2位となるほどのたまご好きである。
完全栄養食品といわれる卵だが、飼料の工夫によってビタミンやDHA、ヨウ素を強化した鶏卵が、栄養価の優れたプレミアムエッグとして浸透している。
機能性表示の実現をにらみ、新製品の開発や、従来品の見直し、エビデンス情報の収集を始める企業も。レシピ提案やメニュー開発、ヘルシー弁当への採用などが進み、たまごの栄養評価が見直されてきた。
さらにたまご由来素材もたんぱく、カルシウムに加え、バイオ技術を応用した感染予防、骨代謝、抗メタボと機能性素材の開発も活発だ。健康産業における「たまご」の存在感が増している。

■本来の栄養機能を再評価
たまごは“誕生”や“生命力”を想起させることから、縁起のよい贈り物としての利用も多い。特に栄養強化した付加価値卵は、妊婦や高齢者向けのギフトとして好評だという。栄養強化や飼育法に工夫を凝らした特殊卵は日本だけでも1000アイテム以上があるといわれており、脳に良いDHA・EPA、αリノレン酸、抗酸化のアスタキサンチン・セサミン、CoQ10、ミネラルやビタミン、葉酸など、バラエティも増えてきた。

たまごの持つ本来の栄養価も見直されてきた。「完全栄養食品」といわれるほど栄養豊富なたまご。たまごは人の体内で作ることのできない8種類の必須アミノ酸をバランスよく含んでおり、良質の動物性タンパク源として、高齢者の低たんぱく予防や運動機能維持が期待できる。
卵黄に含まれるリン脂質の脳への働きやカロテノイドの抗酸化能も注目を集めている。ほかにも、満腹感の持続、抗メタボ、認知機能低下の抑制、抗老化・抗炎症などにも有用とする研究報告が相次いでいる。

各社がコレステロールに関する情報発信を注力するなかで、たまご由来のコレステロールに関するネガティブな先入観も払拭されてきた。
日本卵業協会は現在「たまごニコニコ大作戦!!」と題して、日本全国の鶏卵関係者が自転車リレーでたすきをつなぎながら、全国でたまごの素晴らしさを伝えるプロジェクトを展開する。1日2個のたまごを食べようと呼びかけている。


■機能性表示に高まる期待

たまごを扱う各社は機能性表示制度の行方に期待を寄せる。現在、ビタミンD、E、葉酸を強化した特殊卵が「栄養機能食品」と表示して販売されている。さらに、踏み込んだ機能性表示ができるようになれば、たまごの健康機能について消費者の関心を喚起でき、機能卵の差別化を図ることができるとの見方もある。

米国ではDHAを高含有したたまごに「目・脳の健康によい」という表示や、葉酸添加のたまごに「健やかな妊娠生活のため」といった記載のパッケージが並ぶ。米消費者は、そうした情報を基に、健康影響も考慮したたまご選びをしている。


■たまご由来の機能性素材

また、たまごの黄身・白身・殻・卵殻膜から抽出される機能性原料が開発され、食品用途としての商品採用も進んでいる。完全栄養といわれるたまごの更なる機能性を目指す商品開発と素材研究が進む。
今後の環境変化に応じた取り組みが活発化しそうだ。


【たまごトピック】鶏卵とコレステロール

「たまごを食べ過ぎると血中コレステロールが上昇する」「たまごは1日2個まで」といわれていた。
しかし最近では、たまごに血中コレステロールを下げる働きがあることが知られてきた。卵黄のレシチンが体内のコレステロールを押さえ、動脈硬化、狭心症、脳卒中の予防に役立つという報告も。
卵白に含まれるアミノ酸シスチンにLDLコレステロールを下げる作用があることも明らかになっている。

有力医学誌「British Medical Journal」は今年1月、健常者であれば、1日1個のたまご摂取では冠状動脈や脳卒中のリスク増にはならないとの研究論文を掲載している。

REFERENCES
日本卵業協会 http://www.nichirankyo.or.jp/
農林水産省
posted by O次郎 at 20:37| Comment(0) | 食と健康

2013年09月10日

糖尿病、高血圧の予防にも、歩くことが健康の要

現代人の肥満は、食べ過ぎとともに運動不足が大きく関わっている。
日常的に運動などを取り入れて体をよく動かす習慣のある人は肥満の割合が少なく、コレステロールや中性脂肪などの血清脂質も適正であり脂質異常症(高脂血症)や高血圧など心血管疾患の危険因子が少ない傾向にある。また、インスリンの働きが改善され糖尿病の発症リスクも少ないという。

では、毎日の生活で運動量を増やすことはできるのだろうか。
日常生活で簡単にできる運動とは歩くことである。
「運動する暇がない、長続きしない」という人でも、通勤時や買い物などで1駅分歩くことも立派な運動である。通勤時間などを有効利用して歩くことは、誰でも簡単に毎日の習慣にできる運動である。運動を無理なく長続きさせるために、毎日の生活に組み込む方法は最適である。

新しい研究で、徒歩か自転車通勤をする人々は、マイカーやタクシーなどの自動車通勤の人々と比べて、肥満の割合が少なく糖尿病や高血圧の発症リスクが半減することがわかった。

イギリスのインペリアルカレッジロンドンのアンソニー・ラバティー氏らが行ったこの研究は米国予防医学誌「American Journal of Preventive Medicine」に掲載されている。今回の研究では、16歳〜65歳の 20,458人のイギリス人の勤労者調査データを使用し、様々な心血管疾患の危険因子や健康指標と通勤手段との関係を調べた。

徒歩通勤している人は、肥満の割合が20%少なく、糖尿病の発症リスクが40%低くかった。また、自転車通勤の人は肥満の割合が37%少なく糖尿病の発症リスクは50%も低くかった。特に徒歩通勤の人は、高血圧のリスクも 17%低くなった。
さらに詳細を見てみると、自宅から勤務先までの距離が片道3.2キロ(2マイル)以上の人に効果があることがわかった。

肥満や過体重はイギリスでも問題になっており、イギリス人の62%が該当するといわれており、それにより30%の人が高血圧、5.5%が糖尿病であるとされている。通勤時に歩くような日常生活の行動を通じて身体活動を増進することが全般的な健康状態の増進に寄与する。マイカーやタクシーではなく公共交通機関を利用したり、徒歩や自転車による通勤を奨励することは健康にも有益であると同時に環境にも優しい。

過去の研究でも、毎日の通勤に徒歩や自転車通勤をする人は、それ以外の人に比べて、中性脂肪が少なく肥満や、高血圧や糖尿病を発症しにくいことが示されている。肥満、高血圧、糖尿病は、全て心血管疾患のリスク要因である。自動車ではなく、徒歩や自転車、公共交通機関を利用して通勤することで、日常に運動習慣を取り入れることができ、心臓発作などの心血管疾患のリスクを減らせる可能性がある。

日本においては、厚生労働省の健康増進計画である「健康日本21(第2次)」で、日常生活での身体活動・運動を推進する目標のひとつに「日常生活における歩数の増加」を掲げている。
健康日本21の最終評価によると、身体活動・運動の分野における最大の懸念は、歩数の減少であると指摘されている。歩数は比較的活発な身体活動の客観的な指標である。

国民健康・栄養調査では、歩数計を用いて平日1日の歩数を測定している。2010年では、20歳以上の歩数の平均値は、男性7,136歩、女性6,117歩であった(20歳〜64歳:男性7,841歩、女性6,883歩。65歳以上:男性5,628歩、女性4,585歩)。ただし、歩数は65歳以降、加齢に伴い減少していくので、20歳〜64歳と65歳以上の2つの年齢群に分けて、それぞれ1日当たりの歩数を約1,500歩増加させることを目指し、2022年度までの目標として下記を定めている。

20歳〜64歳:男性9,000歩、女性8,500歩
65歳以上:男性7,000歩、女性6,000歩

歩数を1日1,500歩増加させることは、約15分間の活動時間の増加ととらえることができる。エネルギー消費量では、体重70kgの男性で50〜70kcal、60kgの女性で45〜60kcalに相当する。
こうした取組を1年間継続すると、食事の量(エネルギー摂取量)を変化させずに2.0〜3.5kgの減量が可能であるとしている。

地域によっては、車社会ゆえに近くのコンビニに行くにも車を利用してしまうなど日常的にあまり歩かない習慣のある人もいるだろうが、日常的に歩く習慣を意識してほしい。
通勤時や買い物で歩く、エレベーターを使わずに階段を上がる、電車やバスなどは1駅前で降りて歩いてみるなど、少しの意識の変化で無理なく長続きできるこつは日常にある。毎日の生活習慣に歩くことを組み込んでみよう。


REFERENCES
American Journal of Preventive Medicine
doi:10.1016/j.amepre.2013.04.012
Volume 45, Issue 3 , Pages 282-288, September 2013
http://www.ajpmonline.org/
健康日本21 (第二次)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkounippon21.html





代替医療と予防医学のヒポクラテス
http://www.optimal-qol.net/


posted by O次郎 at 17:48| Comment(0) | 食と健康